標準規格「DOCSIS」が生まれた背景とは?

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「DOCSIS」は「Data Over Cable System Specification」の略で、同軸ケーブルを使ったケーブルテレビ(CATV)のネットワークでインターネットサービスをするための標準規格です。

DOCSISは、1990年後半に登場してから何度かの仕様改定はありましたが、いまでもCATVインターネットサービスをするための標準規格です。誕生から20年以上が経過していますが、まだ現役です。凄いです。

今回は、標準規格「DOCSIS」がなぜ誕生した背景について、ご説明します。

DOCSISが登場する前は「ベンダー独自方式」で乱立状態

1990年代の中頃に、北米ではケーブルテレビ網を利用したインターネットサービスが始まり出しました。まだ「DOCSIS」が登場していないこの時点では、ベンダー独自の技術方式を利用したケーブルモデムシステムを使っていました。

米国ベンチャーのLANcity社を先頭にして、COM21社やZenith Homeworks社、そして大手Motorola社等、様々なベンダー独自のケーブルモデムシステムが登場して、いわゆる乱立状態でした。

ケーブルテレビ事業者が独自方式を採用してしまうと、ケーブルテレビのセンター設備(CMTS)と加入者側の端末設備(CM)が同じベンダーでないと繋がりません。各ベンダー毎に変調方式やプロトコルも違うので当然です。

独自方式で「コスト」「安定供給」の問題が…

この状態は、ベンダーロックイン状態です。

このような状況でのデメリットは、「コスト」です。競争も発生しにくくなるので、製品コストが下がりずらくなります。

もうひとつは、「安定供給」という面での不安です。特定のベンダーに頼っていると、もし仮に製品供給を停止するような状態になってしまった場合に、事業者は最悪サービスの継続ができなくなってしまうことも考えられます。

チップセットの課題を解決するために標準化

実は独自方式は、もうひとつ大きな問題がありました。

独自方式は、変調方式や接続するためのプロトコルが、各社製品毎にバラバラです。それらを実現する為には、各社が個々の仕様に合わせた独自のチップセットを開発し、搭載した製品をリリースする状態でした。

規格を標準化することによって、変調方式やプロトコルが統一されますので、標準仕様チップセットがあれば、各社がそれを使って製品をリリースすれば良いので、格段にコストがぐっと下がります。
この標準仕様のチップセットを供給する会社で、もっとも有名なところが「Broadcom(ブロードコム)」です。

独自方式によるサービス展開の問題点を解決するために動いたのが、製品を利用するユーザの立場である北米のケーブルテレビ大手事業者です。

ベンダー独自の技術方式ではなく仕様の標準化をして、その仕様書に基づいた製品を色々なベンダーに作ってもらおうと考えて、1997年に登場したのが「DOCSIS」です。